水玉桜  sample2


裸の付き合いになると、本音で全てを話せると教えてもらったのは誰だったか。躊躇っていた理由も思い出せないくらいに並んで湯に浸かってしまえば一緒に入る風呂もなんて事なく、短く反応を返したマルコに更に話しを続けた。
「あんたがおれにとって、すげー特別で大切な存在の奴になるとは思いもしなかった」
冷静に考えれば物凄く恥ずかしい事を言っているのであろう。月と桜に酔わされて、春の陽気に浮かれてしまっている証拠か。
「嬉しい事言ってくれるねい」
「日本史の授業やってるあんた、かっこよかったし。女子生徒にモテんのやだった。好きな奴の事大声で話せる女子生徒羨ましかったし、なーんでよりにもよって男好きんなってんのかなとも思ったし、マルコ先生には好きな人居んのかなーとか」
卒業式にも抱いた学校での記憶を語り始めれば、一方的な思い出ばかりが饒舌に口から零れ落ちていく。口にした事は無かったかと思うこれを聞いているマルコの心境などはお構いなしだ。
「あとサッチも羨ましかったしな。マルコの恋愛話も知ってるオーラ出してたし、ずるいなとか羨ましいなとかもっと知りたいなとか、ずっとそんな事ばっかり考えて…」
「もう分かったから、おれの方が恥ずかしいよい」
温泉から出てきた濡れた手が口元を押えられ、汗をかき始めた襟足を軽く掻きながら視線をそちらへ移した。
あんまり見慣れないマルコの反応にじっくりと視線を置いてから、同じく濡れた手で押えられた手を退かした。
いくら思い出を並べたところで、結局統括した言葉はそれ一つしかないのだから。
「好きだよ」
「ああ」
「だから生徒じゃないおれを、もっと好きになってください」
「ああ、約束なんてしなくてもねい」
そうして落ちてきた影に、エースは目を閉じた。今度こそ邪魔するものが現れない確信を得た二人は、何度も触れ合う唇を離そうとはしない。
その相手に先に火が付いたのはマルコの方で、ほんのり熱を持ったエースの頬を指でなぞってから口を開かせ、熱っぽい舌を忍ばせる。
角度をつけて深く潜り込んでくるマルコに欲望じみた獣の様を覚えながら、本気の抵抗は見せない自分の方もよっぽど性交を求める獣だと言える、と脳の片隅で考えていた。
意識がブレていたからだろうか、塞がれた唇の間から漏れた水音がいつも以上に脳をジンと痺れさせ、檜風呂の縁へ付いていた手を滑らせ水面を叩いた。跳ねた湯が顔に掛かるのもお構いなしに互いに舌を弄びながら水中でマルコの腕を捉えると、対抗するもう一方の腕が腰を寄せられ、その拍子に巻いていた唯一の布が解ける。
すかさずマルコの手によって湯船に浮かんだタオルが外へ放られ、同じく水を含んだマルコのタオルもまた重たい音を立てて浴槽から放り出されてしまった。
「ン……っ、ぁ、ふっ…ん……」
服を脱ぐ間を持たないこの場では、遠慮無く内股を這った手の指先がエースの中心を掠めて居なくなってしまう。いきなりのもどかしさに抑えられない性を表すように、マルコの舌へ自分の舌を擦り付けもっと、と訴えるといつの間にか右手が水中で恋人つなぎに指を絡められ、片方の自由が奪われる。
桜を楽しむ余裕も無く、互いに想いを行為にぶつける様は性に興味を持ち始めた高校生となんら変わりない自分達を、否定されたくないのはまた我侭か。
「……っは、腰、もうちょっとこっちに寄せれるかい…」
糸を引いてようやく唇を離したマルコが、水中で胡座をかき口端からこぼれる唾液を舐め取りながらそう指示を出した。
酸素が取り込みやすくなったと、息をして薄く目を開いてから首に腕を回してその膝の上へ乗るように腰を近付ければ、手で持ち上げたマルコの自身とエースのとを合わせて包み、根元からゆっくりと擦り上げられていく。
「うあっ……っん、」
勃起していないマルコ自身に触れるのは初めてだ。同じく自分も、そこまで反応は示していない熱の中心を一緒に持ち上げられる感覚は、喉を鳴らしたくなる擽ったさがある。
水の中では緩く与えられる刺激では物足りない事をマルコは知っているのか、少し痛いほどに握り込まれる手を動かされるたび、水面に波が立ち一緒に脈を打ち上げていく熱が集中し芯を持ち始め、腰の奥を疼かせた。
男同士のセックスで快感を開拓してくれるのはいつもマルコの方で、新たな刺激を求めてしまうこの身体も自制を効かせられず筋を合わせた二本の熱に太く器用な指が、絡んで幹をなぞる度、昇ってくる欲望が先端から先走りとして零れ始める。

熱い。熱い、あつい……。





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