THREE WISHES sample2
その間、数十秒経った頃だろうか。ようやく一度まばたきだけをすると、ほんの3oの距離だけ唇が離れて角度を変えて再び触れる。
ランプの精が一人前とされる年齢は弱冠八年を生きた者。おれは、一人前になってから一年後、九歳の頃から十一年の月日の間に空き時間もほとんどなく、次から次へと呼ばれては様々な願いを聞いてきた。しかし、そんな不明確な願い事をしてきた主人は、仮にも一国の王だというこの男が初めてだった。そして、キスをされたのも。
自らの肌より少し体温の低い手が元々閉めていないシャツに忍んで素肌に触れ、思わず身体が強張った。同時に、触れていただけの唇が啄ばむようにさわり頬から下りてきた手が顎を引き、口内へざらつきとぬめりを持つそれが侵入してくる。
そういう、事なのか…?
学校なんてものが無いエースの国では、性教育などされない。書店では男性がマスターベーションする為のいかがわしい本の取扱いもあるが、今までにそれに縁が無かったエースも都市伝説のように聞いた事のある言葉という認識程度。
自分の認識の中で遠い場所にあったセックスという名の行為を、今している事は近いのではないかと脳の片隅で考えていながら、器用に動くマルコの顎を開いた手が後頭部を押さえ、もう片方の手が脇腹を通って指先で胸を触っていた。
「…横になれよい」
ちゅっと音を立てて唇が離されれば、普段はあまり聞かない命令口調に肩を押されるままベッドへ倒れ、マルコが覆い被さってくる。
願い事で無ければ間違いなく突き放すのに。気持ち悪いような浮遊感、くらくらする脳、その感覚をなんと呼ぶのか分からず開いた目できつく睨んで、口端から垂れかけた唾液を手の甲で拭う。
「たまんねェよい」
挑戦的なエースのその目が、マルコの支配欲を高めペロリと出された舌が唇を舐めて、再び触れるだけのキスを落とされた。
おれに、誰を重ねているのだろう。
じっと顔を見つめられたまま、胸の飾りを強く摘まれると知らない感覚が背中を走り、声となって漏れる。
「アッ、……っ」
「へぇ、お前そういう素質あるんじゃねェのかい」
自分でも聞いた事の無い声。マルコが満足気な笑みを浮かべる。
「ふ、ざけんなっ……ンっ、ん」
悪態吐いたエースの口を塞ぐように再び唇をつけ、首筋を触って舌で肌をなぞる。くすぐったさと、込み上げてくる感覚を奥歯で噛み殺し、着崩されているマルコのシャツを掴み返す事で精一杯だった。
目の前の男が、知らない男に見える。
おれは、何を求められているのだろう。
「ぁ、んっ……マルコっ…、待っ、…て」
「待ってどうする。願い事だろい」
硬く実を成し始めている乳首を転がされ、膝が震えていく。肌に触れながら下りていった唇は、もう片方の乳首へ行き着き、そして躊躇いもなく出された舌に丸々舐め上げられそして、そのまま唇に吸われた。
「ひっ……や、ン」
乳輪にざらついたぬめりが這って、その中心の突起は歯で引っ掻かれる。
指とも違う、生々しい感触に身を強張らせ、背筋にゾクゾクとした感覚を走らせながら、意識をしなくても時々短く途切れる息と共にぼやかされていく視界に脳が、考えるという事を止めてしまった。
体がどう触られると、どういう反応を示すのか知らない。気持ち悪いと思っていた感覚は、もしかしたらそうじゃないのかもしれないと先程から脳内が交互に反対の意見を掲示しては、消える。
実を成した乳首を引っ掻かれただけで、腰の奥が疼くような反応を示す自分の身体のコントロールは既に無くしてしまっており、目の前の男の中にある思考はなんなのか、人の身体を知り尽くされているかのように、欲しいと思っていた熱の中心へマルコの手が触れた。
「い…っや、だっ……」
「こういうのは初めてかい?」
頷く時間も拒否する隙も与えてくれぬまま、その手が器用に腰を締めていたベルトを外し、ウエストを緩められると有無を言わさず下着の奥へ隠れた昂ぶりへ手を触れ、そのまま指を曲げて熱を包む。
「うあっ、や、……っだ、ア、…っやだ、いやだっ……」
自分でも風呂とトイレ時以外で触れた事のないそこを、他人に触られるという羞恥に耐え切れない。無意識に頭を激しく左右に振りマルコの手を両手で押さえて、それ以上の接触を拒んだ。
「一晩、お前を貸すって願い事だっただろい。いいから素直に感じてろよい」
そう告げられてから抵抗を示し拒む手を頭上で一纏めにされてしまうと、身動きが取れないのをいい事に、自身を包み込んでいた手が下着とズボンを共に膝まで下ろされ、露わにされたそれをまた形を確かめるように指の腹でなぞられる。
「い、ぁ……ッン、いぁあ、まる、こっ……」
「いい声上げるよい…」
「や、…っあ、あ……ンン、ふ、んっ」
阻止する術に膝を閉じ手を挟んで動きを止めるよう試みたが、それもすぐに妨げたマルコは、首元や胸元に跡を残していた唇を肌から離し、舌を一つ打って唇を封じた。
支配をする為だけに強引に舌を差し入れ、逃げる舌を吸い上げて絡める。唾液を混ぜて濡れた音を響かせながら、ペニスをしっかり捕えている手を上下に動かし扱いてやると塞いだ口内で声を漏らし、抑え込んだ腕の力も抜けていく。
「あ、はあっ……ん」
「…もう、観念しろよい」
その言葉をきっかけに手を解放してやり、唇を耳殻に当て声を吹き込む。
「悦くさせてやるからよい」
(
本文内一部頁)