wings torn to pieces  sample2(本文内一部)



「エース、……っその手、やめろよい……」
汗が一筋垂れていく。
「え……?」
水分を溜めた瞳が何の事だと揺れて、困惑した表情を見せた。無意識なのが厄介だ。
自分の手も一旦止めて、自身を掴んでいるを剥がしていくと自分の指にさえ縋るようにその手をきつく握り締めてきた。
「しょーがないねい……」
先走りで随分汚したエースの手に軽く口付けて、もう片方の手を背筋を滑って双丘に向かい、その奥に潜む秘孔へ濡れた指を宛てた。
「ひっ……、そこに、………っ挿れんのか……?」
「随分勘がいいじゃねェかい……」
誰だ、それをこの男に教えたのは。そんな事にさえ嫉妬を覚える事を口にしてしまえば、嫌われてしまう可能性もあるだろう。エースに対して狂気だろうと言われて、否定出来る自信などない。
親指と人差し指でその周りを丁寧になぞり先走りを塗り付けてから、人差し指の先ほんの5ミリほどそこへ押し込んでみる。
「いっ……てぇっ………っ」
開拓されたことの無いそこは指を押し返すように指の先の方から内壁が締まってきた。傷つけないようにと一旦指を引き抜き、懲りずにもう一度差し込む。今度はもう5ミリ深く。まだ身体は嫌がる。これを何度繰り返した時に、エースにとって快楽へと変わるだろうか。
もう一度、二度、三度、四度、徐々に深くしていってエースの身体の奥を探っていく。発熱した粘膜が指に絡み付いて、孔へ出入りするのに滑らかさが足された。
そうして慣らされていく秘孔は、追い出すものから食むものへと変化を始め、エースの目が焦点を失ってとろけ始めた。
「はっ……、あ、あっ……」
しまいには痛みさえも、壊れた中枢が快感だと四肢から背、羽根までを痺れさせる。そうエースの身体が変化した瞬間を見た。
「ぁああああっ……、い、ま、……るこ、マルコっ……、マル……、っこぉ」
二本目の指を深く突き立てた時、自分の名を連呼しながら勃起したままの性器から、濃い白濁の精液が勢いを持って飛び出してきた。
下から突き刺している指を自ら腰を上下に動かして抜き差しし、一人で快感を得ることを覚えた獣のように孔が指を貪っている。襞がぱくぱくと開閉し、腰はまだガクガクと揺さ振っていた。
散った精液が二人の腹に掛かり、体勢が悪かったのかそれともそれ程発射が強かったのか、エースの顎にまでそれは飛んでいた。
「ケツでイったのかい?随分エロい身体だねい……」
「は、ぁ、あ……、ァ」
益々自分の息まで上がる。それよりも抑えきれないのは、早くこの身体を突き上げたいとその時ばかりを待っている自分の熱だ。張り詰めた性器が怒気に満ちて、自分から正確な思考能力を弱めていく。そのままいけば成り果てるのは天使の面をした、ただの獣。
息を整えることさえままならないエースは言葉にならない代わりに頭を左右に振って、自分でも予想外の反応で分からないのだと示していた。
「お前も身体の方が素直なんだねい」
兼ね合いに出す対象は特定の者ではなく、不特定多数の女に例えて言っているものである。淫乱は好みではない。素直で無い方が苛めがいがあるというものだ。
熱を吐き出したと言うのに萎える事を知らないエースの性器がぶるぶると震えて、またひとりでに蜜を零し始めた。
射精をした時にも指を銜え込んでいた孔はまだ痙攣止まず、まるで指を味わうように内壁に柔く押されている。そこをまだ解すようにぐるりと回して抜き出した指を、もう一度そこへ戻してやる程自分には余裕が無かった。
エースの腰を掴み持ち上げると、自分の性器がそそり勃つ真上まで身体を寄せて、濡れすぼった先端を下から孔に宛てる。
「ひぁっ………っ、ん、まっ……」
宛てただけで分かるのであろうその質量を、嫌がるように頭を左右に振っているのにも関わらずエースの身体は自分からとめどなく吐き出される先走りを、開閉する孔がぢゅ、ぢゅっと音を立てて身体の中へと取り込んでいく。無自覚である行為である事が余計に憎たらしい。
蜜だけでは足りなくなった孔が、ついには同じように性器の先端を食み始め、思わず自分も息を詰めて沸き上がってくる熱を堪えた。
「……っお前の、中でイかせろよい」
「あ、……っん、……ア、マルコ……っ、ン」
腰を掴んでいた両手を双丘へ下ろし、左右に開いて性器を挟み込ませ、それからエースの腰を半ば強引に下ろしていく。指二本分とは全く比にならない質量を受け入れる程は解されていない膣はギチギチと裂け、身体に熱杭を埋め込ませていく。
「ァッ、あ……っあ、ま、……るこ、マル、コ……っの……」
「ああ、おれの、を……挿れてんだよい」
苦痛か、快感に堪えきれないのかばたばたと小刻みに羽根を揺らし始めたエースに自分も羽根を広げてそれでエースの身体まで包み込んだ。それで痛みが取り除かれるわけでも悦楽の波が治まるわけではなかったが、その羽根を崩れた表情で確認したエースはふっと身体の力が抜けていき、残りの幹も奥まで呑み込んだのだ。
「全部、……入ったよい」
襞は一切の皺無く伸びきって、痛いほどきつく絞まっている。中は焼けるように熱く、自分の精液を搾り取るかのように締め上げてきた。
「は……ッア、んぁ、……っあ」
「……っく、……」
エースの激しい脈打ちが内壁を伝って自分にも通じてくる。エースが自ら腰を振るにつれて腹に擦れる性器が、だらしなく涎を垂らして自分を欲情してくる。
「マ、……っん、ルコ……の、はね……あったけ……」
「ああ、エースも……、あったけェよい……」
相手は悪魔だ、と男同士だ、と自分の中でいくら問い掛けても、答えはいつだって同じなのだ。
その障害がおれたちにどれだけの影響を与える……――?
「あっ、ァ……ふ、んッ、ぅ……、マルコ、……っ」
悪魔だとキスが出来ないのか、男同士だと身体を触れ合うことも出来ないというのか。近付けば近付く程、おれの中でその障害は蹴れば崩れる、なんて事ない壁へと化ける。
だからダメなのだろうと誰かも言う。触れ合えば触れ合う程、心は離れたくなくなる。永遠を求める。それも同意する。
ただ、おれたちはもうこれが最後なのだと決めているのだから。
「エース、……好きだよい」
この場にふさわしいこの言葉を、お前だけに捧げる。身体ごと、心ごと。
言ってはいけないはずの愛の言葉に、一瞬驚いたような目をしたエースを再び快楽の波に連れ戻してしまったのは自分だ。
腰を前後に揺さ振って、下から突き上げる自分の熱でエースの腹の中を掻き乱してから、先だけ残したまま持ち上げたエースの腰を、欲しがる孔へ熱を下から打ち付けるように下ろした。
「はぁああっ……、あ、………あ」
緩んだ口元から涎が落ちてくる。
腰を揺さ振るたび、奥にあるしこりに触れては嬌声を上げるエースに、ここがいいのかと尋ねる声は思っていた以上にうわずってしまっていた。
「へ、……っん、そこ……へん、だっ……」
「きもちいい、んだ……っろい」
そこをごりごりと性器の張り出した部分で削ってやれば、細かく区切ったエースの喘ぎ声が苦しそうに上がる。
反り返る背に変わって突き出された胸に付くぷつりと尖った乳首を指の腹で押し潰し、エースの逃げ場を奪っていく。
「あ、さわ……っんな……っあ」
「触って、欲しそうに……してるくせに、なに言ってんだい」
緩く口角を上げて言う。
今となっては自分が触れるたび、エースの中では全てが性感帯となってしまっているのだろう。四肢をガタガタと震わせて、目の視点はとうに失われていた。それでも尚、気持ちいいとは言わないエースの強情っぷりにもうその言葉を求める意味は無いかと諦める。そんなもの、表情を見れば瞭然だ。
そう言う自分とて限界などとうに越しているのだ。
息が荒れる。毒にかかった身体は、エースの身体の中に自分の精液を吐き出す事によって得る背徳感に、酷く興奮していた。
しかし同時に浮かぶのが、その時を迎えれば、同じタイミングでエースを手放さなければならない時が来る事だった。
出来る事なら一分一秒でも長く、此処に居たかった。
涙や唾液でぐしゃぐしゃに崩れたエースの顔にそっと唇を這わせて、それから唇へ辿り着く。乱れた呼吸が交ざり、舌を絡ませ合ったのはどちらが先だったのだろうか。
「は、ァ……っ、ん」
身体へ再度突き上げた時には、ぐちゅっと卑猥な音が響いてエースが腰を揺さぶった。体の中にある熱情を、エースもまた逃がしたくないのかと思ってくれているのか、呼吸に合わせて緩んだ孔が腰を引く間もなく締め付けられてしまった。血流が更にそこへ集中していく自覚さえあった。
さらわれるままに駆け昇った熱を止める事は出来ず、エースの唇と自分の口とで糸を繋いだまま離した唇から呻き声を小さく漏らし、最奥でその熱を解放した。


(本文内一部)