甘い恋をお探しですか?-10-
「エース、なんでジィちゃんに捕まってんだよ」
「会社で捕まっちまったんだよ」
緊張感を醸し出しながら64型テレビが置かれる向かいに並ぶソファーへ背を伸ばし座る兄弟は、これから叱られる子供のように姿勢正しくおり視線は真っ直ぐ前へ向けたまま、出来る限りの小声でそれを話す。
まぁこれから及ぶ事柄は、どんな子供でさえ怯える親の拳骨が一発下るお叱りで、あながち間違ってはいないが。
ガープの事を毛嫌いしている訳ではないが、彼に厳しくしつけられた兄弟にとっては家族でありながらこの世で一番恐れている存在だ。
その師範はと言えば、明日から分刻みで組まれた国内滞在期間のスケジュールを奥の自室にて確認中である。
ルフィにマルコの事は言っていない。
男に対して恋愛感情を持つ自分が自分でも気持ち悪いと思っていた時期があったというのに、どう説明出来るという。
それをましてや親に問い詰められるというのは、考えただけでも苦しい。
出来ればほっておいて欲しいのだ。
自分でも慣れない恋愛に今にも足を取られてしまいそうなほど、不安定な地を歩いているというのに。
「なあ、ルフィ」
「ん?」
辛い訳じゃない。むしろ幸せを感じている。
公に言えなくても堂々と出来なくても、いくら反対されたところでも、止めるつもりは毛頭無い。
「おれ…」
「さ、聞こうかね」
躊躇いながら口を開きかけた瞬間、兄弟の会話を裂くように垂直線上にある一人掛けの黒皮のソファーへ腰を掛ける。
「マルコくんとの関係を」
その時のガープの目は身の毛立つ程、威圧感を放っていた。それでも逸らしたら負けだと思ったんだ。
痛い程に拳に力を込め、口を開いた。
「言わなくても分かんだろ、付き合ってんだよ」
驚くのはルフィばかりだ。ガープから見て奥に座るルフィの見開かれた目から送られる視線がエースの後頭部へ当たる。
「男じゃろい」
その言葉にいよいよルフィが小さく短い声を漏らした。
「なにが悪い」
そんなルフィに振り向きもせず、目の前の大きな壁にしがみ付く。
「遊ばれてる事に気付かんか!」
「そんな人じゃねぇっ」
荒げて来たガープの声に負けじとエースの声がリビングへ響き渡る。
「わしが見てる限りでも、彼はモテる男じゃぞ。そんな男がお前だけを選んでると思うか」
「思うよ」
「わしはお前を思ってじゃな」
「余計なお世話だ」
返しの早いエースに先に会話を途切らせたのはガープだった。譲らない彼に唸りを見せながら腕を組む。
「彼は次期社長として会社を任せてもいいと思っている有望者だ。但し本当にお前と不純同姓行為が行われてるとするならば、その話はわしが取り止める。お前たちの交際は許さん」
俺は別に偉くなりたい訳ではない。親族が会長に居ようが自分が偉くなりたいと思った事はない。この豪邸をいつか自分が受け継ぐとも思っていない。
いらない。自分はなにもいらないんだ。
だけどマルコは違う。自分と出会うよりもっと前にこの会社を志願し、入社し今の地位まで上り詰めてきた。上の席を望まない訳はない。
嫌だ。どちらも嫌だ。
自分のせいで社長になれる機会を逃すのも。
親のいう通りにこの想いを断ち切らせるのも。
ああ、
「わがままか…」
「そうじゃ」
エースの心を読んだかのように弱く呟かれたエースの言葉にガープが返す。
「ちょっと待ってよジィちゃん!」
戦いの負けを認めたように、視点を足元へ落としてしまったエースを越え、勢いのままに立ち上がったルフィが堂々のガープに投げつける。
「俺マルコって人知らねぇけどっ、ジィちゃんは最近のエース知らねぇだろっ勝手な事言うなよっ。エースの飯、ここ近年ですげぇ旨くなってんだからなっ」
-*TO BE CONTINUE*-