キイロの色はどんなイロ? 03
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視線を時間割表へ泳がせて、二限目の授業が最も苦手とする美術だと分かるや否や新一は席を立ち、教室を後にして行く。せっかく楽しい1限目を過ごせたというのにどこに行くのかと快斗はその背を追った。
足音を消して、気付かれないように影を追う。普段とは逆だ、と楽しむ内に自然と頬は緩み、いつ捕まえてやろうかという興味が沸き立つ。新一が、怪盗キッドとしてのオレを追う心理もこれに似ているのだろうか。
―――新一。
お前を知りたくて、此処まで来たよ。
「なんだよ」
目の前で、こちらを振り向き足を止めていた新一に少し睨まれるような目でオレを見る。そうされてから初めて気付いた。いつから追っている事を気付いていたのかは知らないが、どうやらオレは知らぬ内に追っていたというのに姿を隠す事も忘れてしまっていたらしい。
早くも、探偵ごっこは終了だ。やはり自分に探偵は向かない。
「どこ行くのかなーって思って」
「人を追う楽しみが分かったか?怪盗くん」
「意地悪い事言うなぁ、せっかく仲良くなれたと思ったのに」
オレがそう言ったところで新一は再び前に向き直って、止めていた足を教室とは真逆の方向へ進ませていく。
「2限目出ないの?」
「ああ」
返事は短く返された。
性懲りも無く、それでも新一の後を追う足は止めず、西の階段を最上階まで昇りその一番奥にある部屋、図書室に進ませていく足に自分が先に追う歩を止めた。
「図書室……」
本を読む事自体は、オレも嫌いではない。新一も、きっとシャーロックホームズの本は夢中になって読んだのだろうから、この空間を嫌う理由も無いだろう。
そもそも、新一の父ちゃんは小説家だったか。ならば余計にだ。
新一よりも少し遅れてそっとその部屋のドアを横に引き、羅列する背表紙を左から流し見ていく。所詮は学校の図書室か、これと言って目に留まるタイトルが無い。一つ目の島を過ぎたところに新一はなにやら珍しく医学書なるものを開いていた。
「珍しい」
零れ落ちた言葉は、止めようも無く新一の耳まで伝わり、ゆっくりとその目がこちらを向く。
「なんか誰か病気なのか?」
新一から伝わってくる邪魔だというオーラにも負け怖じず、一歩距離を縮めて首を傾げるとようやく口を開く。
「……目の前に、黄色がちらつく。なんかの病気かと思って」
ぱたりと閉じられた本にはどうやら、その症状が当て嵌まる症例はなかったようで不服気に本棚へ戻し、自分と距離を置こうとまた歩き出した。
「待ってよ」って言ったって聞かないその背を、引きとめられる言葉をオレは知っている。
「ああ。オレ、それ知ってるよ。なんなのか」
キーンコーンカーンコーン――…
酷いタイミングだ。二限目が始まるチャイムが鳴る。二人の間に沈黙が流れ、続ける言葉を見失った。
ところが案の定、新一はその足を止めてこちらを振り返る。その答えに興味はあるのだろう。
新一が言うその症状、思い当たる節は自分にもある。そして、オレは既に答えを見つけていた。名探偵を目の前にするとチカチカと光る黄の色。オレの場合、信号機の真ん中の色のように点滅してすぐに他の色に変わる。それはピンクだったり、赤だったり、青だったりするから最初はなんか脳内のどっかの器官が故障したのかとも思ったんだ。しかし、違った。
名探偵の前だけで起こるそんな症状。答えは、
「黄色って警告の色でしょ。なんかの警告を表してるんだよ」
君も同じなんだ。恋心に反応して光る、警告の色。警告なんてする必要がなければ、世界はきっと色鮮やかなピンクに光っているのだろうに、どうして道を間違えてしまうのだろう。頭はいいのに、君もオレも頭はいいはずなのに。
「どういう時に表れるの?」
「お前と居る時」
その返答は多分、オレも予想はしていなかった。
一瞬合ったと思った視線は、すぐに新一の方から逸らされてしまい、
気付いた時には、床を蹴って彼との距離をゼロに縮めていた。今光っている、オレの中の色はアオの進め、だ。
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