-A Halloween-
「マルコっ、今日が何の日か知ってるかっ!?」
ドアをも蹴破る勢いで彼がマルコの部屋に飛び込んできたのは、十月末日の22時頃の事。
久し振りの長期停泊はこじんまりとした小さな町があるだけの島。1600人分の食料調達とはいかないが、その分海軍の目は行き届きにくくモビーディック号に乗っている船員達は思い思いの時間を過ごしていた。
その中で一番隊隊長は船を守る任務を一人負い、各隊長からの誘いも断り船へ留まり書類整理を続けている最中、それを知ったエースが一時的に下りた島でたらふく飯に有り付いた後に船へ戻ったのが本日昼間の事。
欲しいものは奪う定義の海賊と言えど、男同士で恋心を向けあっている仲がいるとは例え家族であったとしても堂々と公に出来るものではあるまい。夜な夜なこうして頻繁にエースがマルコの部屋を訪れている実態も当然、一部の人達を除いては知らない内密事項である。
ドアに対して背を向けていたマルコが、声で判断した人物にペンを置き、書きかけの書類を机右端に積み重ねられた紙の山の上へ重ね、椅子を半回転視界にその姿を捕えた。
「今日?ハロウィンの事かい?」
「げっ、なんで知ってんだよ」
表情を歪め言うと同時に、後ろ手に隠していた両手の平に収まる平べったい簡素な菓子がポイッとベッドへ投げ捨てられる。
言い当ててしまった事で不機嫌にさせたか、続いて大きく息を吐いたエース自身もベッドへ投げ出された。
「なんでもなにもお前がカレンダーに書いたんだろい。それ、くれるのかい?」
一度カレンダーをちらっと見やった後にエースに目を向け、ふっと気付かれない程度の笑みを零すと手をついて椅子から立ち上がり、仕事の時だけかける眼鏡を外してエースが居るベッドの端へ足を掛けた。
それに対してエースは逃げるように体をベッドの隅へ動かし、菓子の小箱を取る。
「やらねぇよ、俺のだし」
昨日陸に下りた時にでも買ってきたのだろうか、アーモンドが入ったチョコ菓子と思われるパッケージが寝転がったままのエースによって破られ、口内で消化する前にも次から次へと口へ運ばれている。
マルコがそっと重心をベッドへ預けると、大人男二人分の重さを乗せるベッドが軋んだ。
「トリック・ア・トリ−ト」
ハロウィンを表すその一言。
単調且つ誰もが知っている外来語でありながら捉え方、もしくは言葉にする人物、状況によって同単語に細かい変化がもてなされる、まるでハロウィンによく似合うお化けのような単語。
それを発すると同時に、舌をペロリと出し微かに口角を上げたマルコがエースの身体を跨ぎ、手に持たれていた菓子を取り上げる。
「え?」
「菓子くれないと意地悪するぞい」
エースが視線をマルコに戻した時にはもう身じろぎ出来ない状況。抵抗に出そうとしたエースの手は頭上で一括りにされ、視線を泳がしている。
「い、いたずらだろ」
「お前は意地悪と悪戯、どっちがお好みだい?」
「か、菓子やるからどっちもやめ……っ」
「もう遅いよい」
触るのはやはり唇が一番先か。
マルコの言葉に強張ったエースの身体には気づかないフリをして、菓子箱を引き開け中から一粒チョコを取り出し、自らの口へ放る。
舌の上で転がせばカカオと砂糖、他原料が溶け出しやはり自分には甘過ぎるかと下でどうしたものかと身動きが取れないでいるエースに口付け、それを渡す。
「、…いらねぇなら食うなよ」
「誰がいらないって言ったよい」
閉じかけたエースの顎をもう片方の手で引き、開いた口内へ舌を差し入れながら再び唇を塞ぐ。エースの舌を転がるチョコレートを舌先で見つければ互いの舌に擦らせ、丸々入ったアーモンドを取り出すようにコーティングされているチョコレートを溶かしていった。
「ふ、……っん、」
無防備に開かれた胸へ手を這わせると塞がったエースの口端からくぐもった声が漏れ、甘い香りが鼻孔を擽る。深いキスだけで形を成し始めている右乳首を親指の腹で押し潰しエースの反応を窺えば徐々に降参を示すかのよう、抵抗していた手からは力が抜け眉を寄せながらも瞼を閉じる。
溺れ始めた。
熱を持ったエースの姿は嬌艶だ。ベッドのシーツを乱し、身を捩る。二番隊隊長ともあろう男が、男を誘惑するそんな姿を見せるなんて自分以外に知っている者が居るのだろうか。
いや知られていたとしても、それはそれで腹正しい。
目の前にいるのは、胸の膨らみがあるわけではない、細いラインを持った身体でもない。
どちらかと言えば男という男らしい筋肉を纏い、顔付きだってどんなに目の悪い奴でも女と見間違える事は間違いなくいない。
それでも彼に魅かれる理由はなんだろう。彼が好きな理由は…。
それもはっきりと言い切れない自分が彼に身体を求め続けるのは、多分独占欲に近い。
自分だけのものになればいい、エースの全てが。息が荒れる毎に上下する胸も、汗に濡れて顔に張り付く髪の毛も、触れると思っているより熱い唇も、見えているものを映す程暗い瞳も、一番敏感な反応を示す性器も俺だけのものにしたい、一生。
ああ、ハロウィンの雰囲気に呑まれて気でも狂ったかねい。
溶かされたチョコレートの中から姿を現したアーモンドは、マルコの舌によって回収され手を纏めていたマルコの手は再びチョコレートの箱へ伸びた。
「甘ェよい」
名残惜しそうに最後にエースの唇を舐め上げ音を立てて離すと、彼の黒い瞳にまたマルコの顔が映される。
「ん、ァ…っ、ちょ、こだからな…っ」
「ああ、それもだがお前の唾液もいつにも増してねい」
「変態…っ」
「今に知った事じゃねェだろい」
マルコの口へアーモンドを残したまま新たなアーモンドチョコレートを3粒程口に放り、舌を転がす。
毒づくエースさえ愛しく、両手で乳首を摘み上げながらキスを落とせば今度はエースの方からその甘い香りを求めるように舌を出し口付けを誘ってきた。
「、まるこ…っ」
その様子に目を細め、顎を押さえ唾液にコーティングされたその舌を吸い上げて再び甘い舌に自らのそれを擦りつける。熱を上げ、欲情を掻き立てるキスに今更口内で逃げようとしたそれを絡め取り、アーモンドを転がす。
「ん…っふ、んっ」
親指腹で乳首を押し潰せば腰が揺れ、くぐもった甘い声が鼓膜を擽る。
防音設備がそう整っている訳ではない船室、壁一枚向こうにいれば聞こえてしまうだろう喘ぎ声はあえて聞かせてやりたいと思った事もある。
「エース…」
「ん、はぁ、マ…ルコ、した、も触…って」
口を離したかと思えば、そんな訴えに緩く口角を上げ、要望通り腰を締めていたいつものオレンジベルトを引き抜き、ズボンを下げる。自己申告しただけあり、下着にはシミを作らせ形を成し熱を主張させていた。
「感度いいねい、溜まってたのかい?」
耳に吹き込みながら、パンツの奥に手を忍ばせれば腰をゆらりと揺らして与えられる悦楽を望んでいる。
「嫌いじゃねェよい、そういうお前も」
コリ、口内でアーモンドが歯に当たり鳴る。
手の甲でパンツも下げ、下腹部を露わにすると包み込むように根元の方から収めると上下に扱く。
「あ、あ、ア…ッ、ン」
「ほら、精液出てきたよい」
精液に塗れた手と、栓が外れたように溢れだしてくるそれが垂れた性器が擦れ、ぎちゅぎちゅと厭らしい音を部屋に響かせながらマルコに無条件にも与えられる言葉に頭を振る。
「赤黒く変化させて…」
羞恥心を駆り立てているんだ、わざと。
「気持ちいいって、言ってみろよい」
彼の場合それも悦びの材料となる。
「や…っぁ、あ、あぅ…っま、るこぉ…」
溺れろい、もっと俺に。
唾液に濡れたアーモンドを口から一粒取り出し、慣らしていない後孔へ充てがう。
「や、なにっ…っ」
怯える瞳を見せるエースの反応は正しいだろう。
「菓子食べたいんだろい、食べさせてやるよい」
普段マルコを呑み込んでいるそこ、アーモンドのサイズなど小さい位だが慣らしてないとなればまた話は違う。
「アッ、い、っ…や、やだ、やだ…っ」
本来物を受け入れる為の器官ではないそこだが、日頃の現れか細いところから奥へ押し込めばなんなくアーモンドは呑み込まれた。
その様子にニヤリと口元を緩め、
「美味いかい、エース」
言い放つともう三粒のアーモンドも一粒ずつ丁寧に埋め込んでいく。
「や、やだ、やだぁ…っ、あ、あ、まる、こ…っおねが、…ッだ」
腹の奥に溜まっていくアーモンドに心地の悪さを感じているであろう中で、マルコはベッドから降り、デスクへ向かうと一番下の引き出しから先にアーモンドよりは大きい玉の付いたローターを取り出す。
「そういえばお前、今日夜番だったかねい」
「ア、…っん?」
「これ、くわえて夜番過ごしてもらおうかねい」
それを唾液に濡らすマルコは四十手前にして悪戯に燃える子供のような表情を見せている。
「や、ふざけ…っんな」
エースの元へ戻り膝をつけている足の間に割り込み、悪戯な笑みとは似つかわない優しいキスを落として裂かれる痛みを覚える後孔へ唾液に濡らしたそれを無理矢理にねじ込んだ。
「前はそのままにしといてやるよい、お前がどれだけぐちゃぐちゃになるか楽しみだねい」
「あ、あ…っあ、あ…や、みられ…る」
スイッチを入れ、強に合わせれば腰が大きく跳ね腹の前にそそり勃っている性器から白濁液が一瞬飛び出した。
「人に見られるの好きだろい。それにまだ誰も戻ってないから見られるのも限られる、体調悪いとでも言っとけば誤魔化せるよい」
ワイヤレスのローター操作部分を外し、飛び出した精液もそのままに下げた下着を上げ直す。ズボンも履かせ、腰を掴みベッドへ座らせるように体を起こさせるとその緩い衝撃にローターが更に奥に押し込まれたようで、短く嬌声を上げた。
「ア、ンッ」
ローターが中で震える度に、予測不可能な動きを見せ意志なく前立腺に当たってくるアーモンドがエースを翻弄する。
「あ、…あ…っだ、め…だ、む、り…っあ」
肩を揺らし熱っぽく頬も赤らめ、荒い息を吐いて漏れる声は甘いものしかない。
とても見張りが出来る状態ではないようにも思えるが、ベルトをエースの近くへ置くと、マルコは部屋のドアへ向かう。
「飯食ってくるよい。夜番、よろしく頼むよいエース」
部屋の壁にかけられている時計を見れば、22時45分。見張り交代時間まであと15分。
ローターの電源は今ほど出て行かれてしまったマルコの手中にあり、体にひっきりなしに生まれる熱を止める事が出来ない。
「ま、るこぉ…っ」
泣き出してしまいそうな弱々しい声が10月31日の夜、マルコの部屋で響いていた。
-*END*-